東京高等裁判所 昭和31年(う)1969号 判決
被告人 伊藤千代三
〔抄 録〕
所論において、原判示第三の所為を中止未遂の場合に該当する旨主張するが、苟くも、森林法にいわゆる森林において領得の意思をもつて立木ないしはその幹や枝を伐採したるにおいては、その伐採と同時に森林法第百九十七条所定の森林窃盗の罪の成立あるものと解すべきところ、証拠によれば、被告人は、横浜方面で門松用として売却利得するため、原判示森林において窃かに立木である百四十本以上の松の枝を伐り、これを一束約十本位宛にしてその附近に束ねておいては見たものの、その後売却処分するも利得採算に合わないことが明らかになつたところから、その侭已むなく放置するに至つたものであることが明らかであるから、その所為において、森林窃盗の既遂たることはいうまでもなく、到底中止未遂の観念をもつて論ずべき筋合ではない。
(三宅 河原 下関)
注 原審は原判示第二及び第七について普通窃盗を認定しているが、記録並びに証拠によれば森林窃盗と認められるから判決に影響を及ぼす事実誤認ありとして破棄自判